かつて　サムライがいた
武士ではなく　サムライだ
武士は階級だが　サムライだと心になる
魂といってもいい

決してあきらめず
己の志した道をまっすぐに歩き
困難を試練と考え
敗北を謙虚に受け止め
謙虚さを新たな力にし
勝って奢る事無く
負けて怯む事無く
そして
自分の欲よりも　他人の夢のために
生きつづける人を
サムライと呼んだ
かつて　サムライがいた
大勢いた
父もそうだし　先生もそうだし
学校にも　町内にもいた

アメリカの眩しいカクテルライトの下であろうが
イチローがボックスに立つと
嵐呼ぶ草原をかき分けて行く
サムライに見えた
道を求め　笑を断ち
饒舌を嫌い
ただ真直ぐに突き進むための
禁欲の痛々しさと
目的の高さが見えた
笑われないこと
後ろ指を指されないこと
軽く扱われないこと
尊敬を得ること
少々とっつき難いと言われても
愛敬の代償に
尊敬をさし出しては何にもならないと
このサムライは知っている
彼はアメリカに同化するのではなく
アメリカをただ一人闊歩する

ギトギトせず
名刀のような凄みがある
蒼白きサムライの存在は
きっと日本人の印象に
好ましい修正を加えるだろう

見ろ　あれがサムライだ
思い出してもいいんじゃないか
強い日本を